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日本言語学会学会賞

日本言語学会では,学会の研究活動の一層の向上・充実を目的とし,若手会員に主眼を置いて,優れた研究を顕彰するために,論文賞大会発表賞の2つの賞を創設いたしました。優れた研究論文や研究発表がますます活発に投稿・応募されることを期待しております。
なお、直近の受賞者は以下の通りです。

  • 2020年度 論文賞 [詳細はこちら]
    • 大滝 宏一氏(共著者:杉崎鉱司氏、遊佐典昭氏、小泉政利氏) “Two Routes to the Mayan VOS: From the View of Kaqchikel”
    • 長屋 尚典氏 “The Thetic/Categorical Distinction in Tagalog Revisited: A Contrastive Perspective”
  • 第161回大会(2020年秋季,オンライン)の大会発表賞(2件) [詳細はこちら]
    • 山岡 翔氏「ベトナム語ハノイ方言の二重母音の音韻表記について:音響的観点からの検討」
    • 吉田 樹生氏「シンハラ語における数標示の形態論的有標性と頻度」


過去の受賞者については本ページ下部のリンクよりご覧ください。

○日本言語学会論文賞 (2011年度より実施)

過去2年度(4号分)の『言語研究』に掲載された「論文」の中から,特に優れた論文に対して授与されます(賞状および副賞賞金)。(毎年1件。最大2件)(「日本言語学会論文賞」規程)

2020年度の論文賞(2件)

大滝 宏一氏(共著者:杉崎鉱司氏、遊佐典昭氏、小泉政利氏)
Koichi OTAKI, Koji SUGISAKI, Noriaki YUSA, and Masatoshi KOIZUMI, “Two Routes to the Mayan VOS: From the View of Kaqchikel”,『言語研究』156号, pp.25-45(2019年9月)[本文PDF]

 本論文は、Kaqchikel語のVOS語順がどのように派生されているかについての2つの説を検討し、1つの説である右側指定部の分析が他の分析よりも優れていることを論じたものである。比較的研究の少なかった言語について、2つの仮説を統語的議論に基づいて検討しながら、語順の問題を理論的に追求した点は、高く評価できる。特に、Kaqchikel語のVOS語順のpredicate-fronting分析に反対する議論は説得力もあり、優れている。この議論が他のVOS言語の分析との関連でどのような理論的含意を持つのかについての議論がもう少しあってもよいなど、若干不十分な点は認められるものの、議論が明晰である点などを含め、日本言語学会論文賞授賞論文にふさわしい内容を備えていると判断できる。

長屋 尚典氏
Naonori NAGAYA, “The Thetic/Categorical Distinction in Tagalog Revisited: A Contrastive Perspective”,『言語研究』156号, pp.47-66(2019年9月)[本文PDF]

 本論文は、タガログ語を日本語と対照して、日本語の「は」と タガログ語のangがKuroda(1972)の提起したthetic/categoricalの区別を表しているか否かを検討したものである。これまでの説の妥当性に疑問を呈し、新たな根拠に基づいて、個々の言語現象ごとに丁寧に論駁を行っている。特に、thetic/categorialの区別ではnominative NPsの分布は説明できないとする議論は説得的である。タガログ語と日本語で感嘆文、存在文などが完全に等価であると見なしてよいかなど、若干の疑問点はあるものの、対照研究の論文としての議論の展開が明快である点を含め、日本言語学会論文賞授賞論文にふさわしい内容を備えていると判断できる。

[授賞式(第161回大会,11/22,オンライン)]

2020年度論文賞授賞式-大滝

2020年度論文賞授賞式-長屋

○日本言語学会大会発表賞 (2011年秋季大会(第143回大会)より実施)

大会における優れた口頭発表・ポスター発表に対して授与されます(賞状および副賞賞金)。(毎回数件)(「日本言語学会大会発表賞」規程)

第161回大会(2020年秋季,オンライン)の大会発表賞(2件)

山岡 翔氏
「ベトナム語ハノイ方言の二重母音の音韻表記について:音響的観点からの検討」

 本発表は、ベトナム語ハノイ方言における二重母音の音韻表記についての見解が先行研究で統一されていないという問題を取り上げ、その問題が聴覚印象によって音韻表記が決定されていることに起因すると指摘した。その上で音響的観点、特にフォルマントの特性から二重母音を分析し、実証的に音韻表記を同定した。本研究は、そのスコープがやや狭いきらいはあるものの、これまでなされてこなかったベトナム語音韻論の音響音声学的分析が着実になされているという点で新規性があり、またその明確な実証にも高い評価が得られた。今後の展開にも大いに期待できる発表であり、大会発表賞を授賞するに値すると認められた。


吉田 樹生氏
「シンハラ語における数標示の形態論的有標性と頻度」

 本発表は、シンハラ語において無生名詞の一部の単数形が複数形よりも有標な標示をうけるという通言語的に珍しい事実に注目し、この形態論的有標性と頻度に相関がある可能性を検証した。コーパス調査の結果、無生名詞では形態論的有標性と頻度が対応している傾向があることを明らかにした。選考部会では「無標」をめぐる理論的議論がやや不足したままデータを統計処理している点に問題が見られるという指摘もあったが、統計的手法によって形態素の特性を実証的に明らかにしようとした本研究の方向性と成果は独創性と着実さにおいて高い評価が得られた。将来性という点でも、氏は大会発表賞の授賞者としてふさわしいと判断された。




第160回大会(2020年春季,オンライン)の大会発表賞(3件)


王 丹凝氏
「南琉球宮古語新城方言における再帰代名詞duuとnaraの使い分け」

 本発表は南琉球宮古語新城方言における再帰代名詞の3つの形式、una、duu、naraの使い分けを記述し、特に機能的に類似した duu と nara に注目し、duu は一般的な再帰代名詞として汎用性がある一方、nara の使用には人称・格の制限があることを報告した。さらにCase Hierarchy (Blake 2001,2004)との関連を指摘し、本研究の類型論への示唆が論じられた。インフォーマントが1人であることや、発表スライドについて一部音声解説が欠落しているところなどについて改善の余地を指摘されたが、全般的に論が明快で発表もたいへん分かりやすく、方言調査に基づく記述にとどまらず類型論への貢献が論じられるなど、将来性の観点からも高い評価が得られた。


津村 早紀氏(共同発表者:新井学氏、馬塚れい子氏)
「子どもの言語理解能力の発達と抑制機能の関係性」

 本発表は、絵の判定に基づくGo/No Go課題によって計測した抑制機能の指標とガーデンパス文の解釈という言語処理機能の指標に相関があるかを5歳から8歳までの⼦どもを対象として検証した。その結果、両者の関連がみられ、混乱を誘発する⽂の理解において、抑制機能の個⼈差が影響している可能性が⽰された。刺激として用いられたガーデンパス文の逸脱性に関して意味の観点からの統制が必ずしも十分でないといった課題は残されているものの、実験計画や問題設定については新規性および発展性があり、着実な分析手法が取られている点などにおいて高い評価がなされた。


峰見 一輝氏(共同発表者:広瀬友紀氏、伊藤たかね氏)

「日本語wh疑問文における文法性の錯覚と記憶処理─文読解中の視線計測実験─」

 本発表は中央埋め込み補文を含む主節wh疑問文をめぐって、文法性の錯覚が作業記憶への探索を駆動するかを視線計測によって検証した結果を報告している。ここで問われている研究課題は、文解析器と文法が独立した異なる認知システムなのか(「独立仮説」:Townsend and Bever 2001)、それとも同じ認知システムなのか(「同一仮説」::Lewis and Phillips 2015)である。本発表では、文法性錯覚に基づく読みの促進が非文においてのみ観察されたと報告され、文解析器が文法性によって異なるふるまいを見せる点で「同一仮説」を支持するとの結論が出された。促進と抑制のロジックがやや分かりにくかったが、文法性の錯覚の実時間処理を正文と非文の比較から検証した点に新規性があり、また、論の立て方が周到で、発表もたいへん落ち着いていて着実だった点に高い評価を与えられる。



[授賞式(第161回大会,11/22,オンライン)]
2020年度発表賞授賞式-王

2020年度発表賞授賞式-王

2020年度発表賞授賞式-王

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