トルコ語の時制/相/法接辞と疑問詞mI,人称接辞との相対的順序

吉村 大樹(神戸市外国語大学大学院)

トルコ語で動詞の時制/相/法接辞により疑問詞mI と人称接辞との順序が変わる現象について、Sezer (2000)は句構造を用いて論じた。しかし母音調和現象やmI が文中に生起する構文を説明するためには統語的な説明の他にmI が音韻・形態論的には接辞として振舞っていることを説明しなければならない。本発表では、Hudson (2001)の提唱する接語(clitic)とホスト・ワード(hostword)という2つの概念を用いて、接語が統語的情報をもつこととホスト・ワードが厳密な内部構造をもつことを論じた。その結果、mI と人称接辞の相対的な位置の違いは、ホスト・ワード内部での接辞の形態素配列の違いとして説明できる。また文中にmI が生起する場合についても接語とこれらの概念を用いつつ、形態論とmI に関係する統語論を同時に表示することで、接語群や統語論上の理由で不適格な構文を説明できることを論じた。