空間場所成分の目的語化表現
―日朝中3言語の対照―

朴貞姫 (明海大學大学院)

他動詞の目的語(object)は、もっとも典型的な目的語であり、人間言語の普遍現象の一つでもある。Hopper & Thompson(1980)によって「他動性上昇」が提唱されて以来、場所成分の目的語化ついての先行研究は、各言語においてその成果が上げられつつあるが、対照言語学的研究成果はあまり上げられていない。筆者は場所成分の目的語化における日朝中3言語の対照を通じて、日本語は、他の言語とは異なる「なる」的言語類型の特質から「を」格という独特な言語標識で「経路」という[意味格]を表しているため、場所成分の目的語化現象は存在しない、という新たな言語事実を発見した。日本語に対して朝鮮語と中国語では、それぞれ「-研reul」(目的語格標識)、“V+O”(目的語格語順)という文法格で、場所成分を目的語化することが可能である。本稿では、場所補語と場所目的語の構造を中心に日朝中3言語の目的語化の規則ないしプロセスを考察し、異同を探ることによって3言語を言語類型的に特徴づけることを目的としている。