条件文の機能的意味と事態の肯否

川嶌 信恵(大阪外国語大学大学院)

日本語の条件文は発話行為による働きかけの機能をもつことがある.これは,先行研究で命題をどのようなものとして捉えているかという話者の語用論レベルの評価によるとされていた.しかし,評価にはレベル差が存在する.本稿では,言語化される以前の事態そのものに内在する評価性によって出る場合を示した.さらに,評価性の存しない場合でも,命題の肯否によって機能的意味が生じることをみた.恒常条件を表し,単にその理論的な関係を述べているにすぎない文は,機能的意味はもたないはずである.
(1) 2と3を足すと5になる.[肯定+肯定]
(2) 2と3を足さないと6になる.[否定+肯定]
しかし,(3)は,何をするのか分からないのに適格性は落ちない.
(3) 2と3を足さないと5にならない.[否定+否定]
〔否定→否定〕のとき,論理的な関係の意味は希薄になり,前件の事態を行うことが必要だという意味になる.