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キルギス語の受動文にみられる複数の動作主マーカーについて

大崎 紀子(京都大学大学院)

キルギス語の受動文における動作主表示が,与格,奪格,後置詞 (tarabïnan) の三通りの方法によって行われることを示し,その分析の特徴と使い分けに関わる要素について次の諸点を指摘した. (i) 与格及び奪格による動作主表示は口語中心に用いられ,動詞の語彙的な制限が関わるが,後置詞による表示は文章語的であり,また動詞の語彙に制限されない. (ii) いずれの表示も他の意味に誤解される可能性があれば避けられる. (iii) 与格による動作主表示を許す動詞は何らかの「被害」の意味を含む場合が多い. (iv) 与格と奪格による動作主表示の間には,動作の対象と動作主との間の相対的な視点の軽重という機能上の差がある可能性がある.

また,与格受動文について,「間接受動文に相当する使役文」とあわせて「被害受身」という一つのカテゴリーをなすことを主張した.その上で,それが古代チュルク語から引き継がれた歴史的背景を持つものであることを述べた.

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