認識動詞構文について
―「(X ガ)A ヲ B ダト思ウ」と「(X ガ)A ガ B ダト思ウ」―

阿部 二郎(筑波大大学院)

本研究は「(X ガ)A ヲ B ダト思ウ」の形をとるいわゆる認識動詞構文について考察し,これが「(X ガ)A ガ B ダト思ウ」という文から直接派生されたものとは考えられないということを主張した.

その根拠は (1) 「A ガ B ダト思ウ」が「~ト」の内容によっては「A ヲ B ダト思ウ」に置き換えられない点,また遂に (2) 「A ヲ B ダト思ウ」が反事実的な内容などを表すとき「A ガ B ダト思ウ」に置き換えられない点にある.

(1) は「A ヲ B ダト思ウ」が「A ガ B ダト思ウ」に比べ「~ト」の内容に関して多くの意味的・形式的制約を持つことに起因しており,(2) は両者が構造的に異なっていることに起因している.とりわけ (2) における両者の構造的な違いが,「A ヲ B ダト思ウ」における「A ヲ」が指示的に透明な解釈となり,「A ガ B ダト思ウ」における「A ガ」が指示的に不透明な解釈となるという両者の意味的な違いと対応していることを論じた.