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英語における二つの「過去」表現
―談話構成機能からみた現在完了形と単純過去形―

山内 真理(大阪大大学院)

本発表は,英語における現在完了形と単純過去形の用いられ方の違いを明らかにすることを目標とする.従来,両形がともに発話時以前に起こった出来事に言及することができること,選択を動機づける要因が言及される出来事に対する話し手の見方であることが認められてきた.

ここでは,話し手による出来事の捉え方の反映を観察・分析するためにモダリティの観点を取り入れ,Lyons (1977) の提案する二タイプの発話態度のモダリティ(事実の断言に際して「私の見方では…ということになる」という留保 reservation を含める主観的発話様態 subjective modalization とそのような留保をつけずに断言する客観的発話様態 objective modalization)が現在完了形を用いた陳述と単純過去形を用いた陳述に適用できることを示した.

例えば,両者が交換可能であるとされる「近接過去」の文脈でも,発話様態の違い(話し手,聞き手の知識状態についての考慮が反映される)を考慮に入れることによって交換不可能な場合が限定できることを指摘した.また,現在完了形を用いた陳述が,ある事実を,話し手による解釈・話し手が取り出した一側面として提示するものであることを例証し,話題の導入(挿入)・締め括りなど談話構成上の特定の位置に現れる現在完了形が,このような発話様態の特性を利用したものとして記述できることを示した.

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