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A Cross-Linguistic Study of Prosodic unit in Japanese and English

栗栖 和孝(獨協大大学院)

Prosodic Morphology の研究において,各言語の韻律上の単位の問題が取り上げられている.日本語においては語形成の観点から韻律上の単位がこれまで取り上げられて来た(Poser, 1984; Tateishi, 1989; Poser, 1990; Mester, 1990; Ito, 1990; Kurisu, 1995; 栗栖・大竹, 1995).これらの研究は日本語における韻律上の単位としての bimoraic foot の重要性を論じているが,Kurisu (1995) や栗栖・大竹 (1995) を除いては実証的観点からの考察は行われていない.それに対し,英語においては語形成に依らない非派生語に対する韻律上の単位は研究されてきた (Golston, 1991) が,語形成における韻律上の単位に関しては研究されていない.

本研究は同一の言語材料と実験手順を用い,日本語話者と英語話者に対してそれぞれ四つの blending task を行うことによって,日本語と英語における韻律上の単位を実証的に検証することを目的とする.実験Iでは CVNCVCVCV+CVCVCVCVCV,実験IIでは CVCVCVCVCV+CVNCVCVCV,実験IIIでは CVCVCVCVCV+CVCViVjCVCV,実験IVでは CVCVCVCVCV+CVCVNCVCV の組み合わせの(疑似)地名を刺激語とした.被験者には前半と後半の(疑似)地名の前の方の一部分ずつを組み合わせ,一つの新地名を作るように指示を与えた.その結果,日本語話者は実験Iから実験IVの全ての場合において語頭の二モーラを取り出す傾向があり,統計的に有意に多いことが明らかになった.それに対し,英語話者は語頭の二音節を取り出す傾向が強く,統計的に有意に多いことが明らかになった.

以上の日本語話者と英語話者を被験者とした実験結果から,前者においてのみ bimoraic foot が語形成の際の韻律上の単位である可能性が高いと考えられる.従って,語形成の際の韻律上の単位としての bimoraic foot が日本語固有の単位である可能性があると言える.

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