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日系ブラジル人と日本人の心内辞書表示の単位について
―音節とモーラ―

大竹 孝司(獨協大)
米山 聖子(オハイオ州立大大学院)
篠木 れい子(群馬県立女子大)

最近の心理言語学の分野において,音声知覚の単位に関する研究が活発に行なわれており,語彙獲得前の音声知覚の単位が言語のリズムを構成する単位(音節・ストレス・モーラ)と密接な関係があることが明らかになりつつある.本発表ではこれらの単位に基づいて心内辞書表示が行なわれるとする仮説 (Cutler et al., 1992) を日本人と日系ブラジル人を被験者として二つの実験により検証を行なった.

日本人を被験者とする実験では,撥音を語中に含む三モーラ二音節,四モーラ三音節,五モーラ四音節からなる外来語(セント,ツンドラ,フラメンコなど)を録音された音声で提示し,語中内の中央に位置する単位を報告させた.その結果,モーラを単位とする心内辞書表示が行なわれている可能性が高いことが明らかになった.

日系ブラジル人を被験者とする実験では,滞日一年未満,日本語の会話能力が低く,読み書きがほとんどできない者を被験者とし,前述の単語を口頭で読み上げ,語中の中央の単位を報告させた,その結果,音節による心内辞書表示が行なわれている可能性が高いことが明らかになった.

以上の実験結果より日本語とポルトガル語の言語のリズムはそれぞれモーラ・タイミングとシラブル・タイミングであり,音声知覚の単位はそれぞれモーラと音節であることが報告されていることから,Cutler et al. (1992) が主張するように心内辞書表示の単位は音声知覚の単位と密接な関係が存在する可能性がある.ただし,日本語については,仮名文字による可能性があり,今後更に検証を行なう必要がある.

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