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措定と指定―ハとガの一面―

上林 洋二

最近の研究ではハとガの問題を旧情報・新情報という概念で説明しようという試みがしばしばなされている。しかし,西山 (1979) 「新情報・日情報という概念について」が指摘するように,この概念は明確に規定されていないし,これを西山の言うように,旧情報・新情報になるものは項目ではなく命題だと解釈してみても,ハとガの問題の考察には,あまり役立たない。
今,コピュラ文におけるハとガに問題を絞ると,三上 (1953) 『現代語法序説』に述べられていることを明確にした形だが,次のようなことが言える。
(a) A ハ B ダ〔措定〕
「A」で指示される指示対象についていえば,それは "B" という性質を持つ
(b) A ガ B ダ〔指定〕
「B」で指示される指示対象,もしくは "B" という性質を持つものをさがせば,それは「A」の指示対象である。
こう考えることにより,「社長は私だ」と「私が社長だ」が同義なのに,「犬は動物だ」に対する「動物が犬だ」がないこと,「話しているのは誰だ」は話している人を指でさして名前をたずねるときにも,「話しているやつはどこにいる」という意味でも用いられるのに,「誰が話しているのだ]は後者の意味でしか用いられないこと,「読売新聞の社主は巨人軍のオーナーだ」という文は,読売新聞の社主という人物が,巨人軍のオーナーという性質を持っているという意味にも,読売新聞の社主という性質を持っている人物をさがせば,それは巨人軍のオーナーという人物だという意味にもなるのに,「巨人軍のオーナーが読売新聞の社主だ」は後者の意味にしかならないことなどが説明される。

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