助数詞(類別詞)の意味構造と体系

松本 曜

日本語の助数詞の意味構造と体系を分析し,その中で prototype semantics の考え方が有効であることを論じる。
まず人間性を適用の必要条件とする助数詞として,「人」「名」「方」があげられる.この中で「人」は無標のものであり,他の二つは社会言語学的な条件を特つ。
次に非人間性と有生性を必要条件とするものには「匹」「羽」「頭」がある。[匹」は無標の立場にあり,「羽」は羽根が目立つこと,「頭」は人間程度の大きさより大きいことと羽根のないことを条件とする。
無生性を必要条件とするものは数多く存在する。その中で「つ」は無生性のみを条件とする最も一般的なものである。また,形状のみに規定されるものに「粒」「本」「枚」「個」などがある。 これらはそれぞれ,〇次元的,一次元的,二次元的,その他,であることを条件とする。ただ(空間的)独立性の条件が必要条件または典型条件としてかかわってくる。このうち「本」は典型の概念を用いてさらに分析され,一次元性が目立ち,巻かれておらず,論をなしていない場合を典型例とし,一次元性があまり目立たない場合,巻かれている場合,論をなしている場合を非典型例としていると考えられる。形状以外の条件を持つ助数詞は多く存在する。それらは適用限定性が高いこと,及び明確な体系が認められないのが特徴である。このうちいくつかは少数の(必要)条件から規定できる(「冊」「部」など)。しかしその記述に典型の概念を必要とするものも多い。たとえば「軒」は建物としての空間的独立性,世帯との対応,大きさ,用途などに関する条件が典型条件として束となり典型(普通の家)が規定される。
全体の体系については,助数詞間に上下関係を認めることができるが,動植物の taxonomy のような整然とした階層性は見い出せない。