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根文の自己修飾

高橋 孝二

Opacity が組み込まれている根文そのものが一つの Governing Category (GC) としての機能を形成するならば,GC の三つの性質がはじめから根文に備わっていることになる。 このうち "accessible SUBJECT" は定形節の主要部位である INFL の AGR 要素であり,これも名詞性を持つなら根文 (S) ドメインは本来的に二つの「主語」を持つことになる。根文内での構造変化がこれらの主語位置に関与して起るとき,[NP, S] の痕跡は語彙的に統御されないため,自らの先行詞によって統御されるように自己を修飾する(自己トレランス)。根文内の一切の要素を e-統率するという意味で最も顕著な二つの主語間の位置交替が,疑問文や否定文に認められる「AUX ブリーチ」の現象である。 AGR が主語 NP を受け入れるとき GB 理論の原理群が局所的に作動する。

通常の NP-to-NP を移動回路とする「文のモナド化」に加えて,位置交替 (1) も主語への回帰現象であり,(subject, SUBJECT) のアマルガムは格標識された θ-連鎖を形成していて格フィルターは満たされる。根文の COMP が wh-句の充填等によって活性化するとき,INFL が (1) によって COMP からの統率支配を受けることになって新たに最大投影形式を作るが,これは non-argument 根文内での COMP-INFL 間の協同作用の一効果である。「AUX ブリーチ」は根文の単連鎖を二分させ,ドメイン構造が [±N] と [±V] とを対応させるように自己を調節する一般的プログラムの発現である。本論考の原理は内的に飽和した成型 (2) によって与えられ,変形の「自己類似性」という視点に導く。
(2) matrix S= (S [COMP + N] [S + V])

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