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日本語とアメリカ英語に於ける出会いの挨拶表現について

鈴木 亮子

出会いの挨拶は,人間の社会的な関係を一瞬のうちに確認する儀礼であり,滞りなく行われなくてはならない。挨拶行動の communicative competence とはどの様なものか,日本語とアメリカ英語で,どのようなルールの相違があるのか,図式化した(本誌上では図は省略)。知り合い同士のごく日常的な場面(除冠婚葬祭)での言語表現,特に挨拶の第一声の中にみられる三つの構成素,決まり文句,呼びかけ言葉,呼称の働き方と選択規則をみた。 日本語では決まり文句(おはよう等)や呼びかけ言葉(やぁ等)が単独で機能する一方,英語では決まり言葉(Hi 等)や呼びかけ言葉(Hey)は呼称と共起する場合が多い。選択規則をみると,日本語でまず問題となるのは,家族(同居者)への挨拶かどうかで,このファクターはアメリカ英語には欠如している。家でだけ使える「お帰り」といった表現がないのである。次に共通のファクターとして,相手の地位や年令が上,或はお互いに疎であるかどうか。このファクターの為に,おはよう“ございます”を上司に使うのである。さて,ここでアメリカ英語だけの「免除」ファクターがある。これは,上や疎の間柄である相手の方が,First name で呼び合おうと提案してきたりフレンドリーである場合,こちらも,親しい相手用の決まり文句 Hi や,呼びかけ Hey と呼称 First name を組み合わせてインフォーマルな挨拶をしてよいというものだ。アメリカ英語では,誰にでも First name を使う傾向が強い事や,学生が教授に Hi と言える事は,この免除ファクターの働きが強いから可能なのだ。「力が上の人,親しくない人かどうか」が,日米共通のファクターであった事は,「出会った人間が向かいあったとき生じる緊張をほぐし,関係を安定させる」という挨拶行動の本質と相通ずるものがある。

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