談話空間分割の原理
―コソア,人称代名詞,イク・クルの構造

山崎 直樹

「ウチ←→~ウチ」という一組の対立を次々にオーバーラッピングさせて構成したダイヤグラムで,指示詞の体系,人称代名詞の体系,往来動詞の体系を記述する。(指示詞,人称代名詞については省略)


〔ウチ3・~ウチ3〕は〔発話行為の参加者の領域に属するもの・発話内容のみへの参加者の領域に属するもの〕,〔ウチ2・~ウチ2〕は「発話行為の参加者の領域…」の中での〔発話行為の参加者自身・そうでないもの〕,〔ウチ1・~ウチ1〕は〔話し手 (S) の領域に属するもの・聞き手 (H) の領域に属するもの〕である。図中の大文字は「イク」,小文字は「クル」である。「イク」を無標,「クル」の特性を〔到達点がウチ〕と定めることにより,すべての用法が記述できる。
また,話し手自身を常に含んで拡大・縮小する〔ウチ〕を設定する,この分析は,大江三郎 (1975) 「日英語の比較研究」,久野 (1978) 「談話の文法」などの,話し手自身の本来の位置が明確でないシステムより簡潔かつ一元的であり,ダイヤグラムに明示できるというメリットをもつ。