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時の副詞的名詞句に関する一考察

冨永 英夫

時の副詞的名詞句とは,以下に示すように,構造上は名詞句の特徴をもち,機能上は副詞句の働きをするものをいう。
John arrived [NP that moment / minute / hour / day / week / month /year].
John arrived [NP the previous April / March 12 th / Sunday / the Tuesday that I Saw Max].
本発表の目的は,これらの時の副詞的名詞句がGB理論の枠組みでいかに分析されうるかを考察することであるが,ここで問題となることは,つきつめれば,それらが文中においてどのようなメカニズムでライセンスされるかということである。結論だけをまとめると次のようになる。
時の副詞的名詞句(及び他の副詞的名詞句)に格を与えることは,構造格であれ,固有格であれ不可能である。従って,文中の他の要素とは格関係でなく修飾関係で結ばれていると考えるのが妥当である。また,このとき,修飾関係は無条件で結ばれるのではなく,副詞的名詞句の主要部の名詞が適当な素性(例えば [+TEMP])を特つこと,かつそれが適切な素性(例えば [+deictic])を持った要素に限定を受けることが要求される。
これにともない,格フィルターは「すべての音声内容を特つ項名詞句は格を持たねばならない」という形に修正される。これは,補語となる名詞句に格は必要ないとする立場と軌を一にするもので,ある。その結果,格フィルターと θ- 規準は極めて類似し,将来の一本化の可能性が示唆される。
最後に,考察の結果,名詞句には項となるものの他に,本発表で取り扱った副詞的名詞句のように文中の他の要素(主要部)と修飾関係で結ばれるもの,そして補語となる名詞句のように文中の他の要素(最大投射)と叙述関係で結ばれるものがあることが明らかになった。

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