日本語のリズムとモーラの時間的直線性

大竹 孝司

本研究では日本語を母語とする話者と日本語を第2言語として学習する英語を母語とする話者が発話した日本語音声をモーラタイミングの観点より以下の特性について実験的に分析を行なった。
日本語の音声は各モーラの単位が一定の時間を特つモーラタイミングであるとされているが,Port et al. (1987) は日本人が発話する日本語音声は各モーラが一定の時間の長さを特つことから単語内のモーラの数とその時間の間には直線的な関係があると考え,これをモーラタイミングの時間的特性の一つとしている。本研究ではこの特性が日本語学習者が発話する日本語音声ではどのように表われているかを9名の英語を母語とする話者と同数の日本語を母語とする話者が発話した3から5モーラの子音と母音の CV の連鎖の無意味語におけるモーラの数とその時間の関係を調べた。
結果は日本語学習者と日本語を母語とする日本人が発話した音声のいずれにおいてもモーラ数とその時間の間には直線的な関係が存在することが分かった。この結果が示していることは日本語学習者の学習期間が短期であることから Port et al. (1987) が主張するモーラの数とその時間が直線性を示すのはモーラタイミングの時間的特性ではなく言語一般に見られる特性と思われる。