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基本語彙のプロトタイプ分析

田中 茂範
野中 慶子

基本動詞の意味を調査するには,調査対象となる素データが何であるかを明確にすることから始めなければならない。その場合に問題となるのは,言語がある時点までに経験し記録したデータと個人内データとの関係である。これは意味を心理現象とする認知意味論的な枠組み内で基本動詞の意味の構造を探ろうとすれば特に重要になってくる問題である。素データの特質を明かにしたなら,次にそれにどういった構造を求めるか,あるいは意味情報をどうとらえるか,といった根本的な問題がでてくる。この問題が解決された段階で,どこに何を求めるのかが決まる。次の段階では,当然どうやって問題を探索するかである。
この研究では,これらの3つの問題に対して次のような答を用意する。まず,崇データに関する問題については,ある語 W の表れの可能性を示す [En] と W が言語で実際に使われた(ている)用例/イグゼンプラーのリストである [en] を [En] の部分集合として区別し,さらに個人の使用レンジを表す [Sen] を区別する。研究の対象は観察可能な [en] と [Sen] とする。次に,素データにどういった構造を求めるかといった問題については,(1)W の意味範囲の外郭を表すコア(最大公約数的な意味),(2)W の意味の内部構造を規定するプロトタイプ,そして(3)W と概念的に関連する他の語の意味との関係をとらえるネットワークの3つを想定する。つまり,コア情報,プロトタイプ情報,ネットワーク情報を基本動詞の意味情報として求めるわけである。最後の方法論については,コンピュータコーパス言語学の方法と実験意味論の方法を統合するやりかたを提案する。
今回の発表では,基本動詞の意味情報の中でも特にプロトタイプ情報に着目し,hold のケース・スタディーを紹介する。(尚,この発表は文部省海外学術研究「コンピューターコーパスを利用した認知言語学的分析とその CAI への応用」(研究代表者: 野中慶子)の一部である。)

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