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タガログ語の無動詞文の主語

吉村 近男

Schachter (1976) はタガログ語の「主語」を動詞文に基づいて論じ,単一の統語範ちゅうとしての存在は他の諸言語における認定方法に従う限り認められず,むしろ指示関係特性(関係節化など)と役割関係特性(同一名詞句削除など)との相違を重視すべきであるとした。しかし,そこでは無動詞文(むきだしの動詞述語文ではない,主としてコピュラ文相当の文を仮にこう呼ぶ。ただしタガログ語にはコピュラは存在しない。)との整合性に難があった。また Schachter and otanes (1972) では動詞文も無動詞文も一律に Predicate + Topic とされている。一方,Constantino (1970, 1971) は以下に順次例示するように文を definite,indefinite,situational に三分類し,前二者を subject + predicate,後者を predicate + subject と認定する。(注:英訳と異なり前二者を分裂文とは見ない)
Ang bata ang kumain ng mangga. (It was the child who ate a mango.)
Bata ang kumain ng mangga. (It was a child who ate a mango.)
Kumain ng mangga ang bata. (The child ate a mango.)
この立場は母語話者としての言語直感に支えられ,格文法,生成文法を視野に納めて提出されたものであり,幾つかの興味深い形態論的洞察を可能としたが,しかしその一方で,フィリピン諸語一般の深層構造として提案された関係上,タガログ語内部での検証に欠く憾みがある。本発表ではこの点について 1. 名詞句の種類と位置,2. 人称代名詞二人称単数 ang 形の ka/ikaw の区別,3. 複合名詞句形成,4. 倒置マーカー ay の用法,などに基づき,Constantino の結論自体は基本的に支持されるものであることを確証する。

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