文理解における情報構造と統語構造の交互作用が生じるタイミングについて

今村 怜,小泉 政利

Kaiser and Trueswell (2004)は,文理解時における情報構造(旧新語順vs. 新旧語順)と統語構造(基本語順vs. かき混ぜ語順)の影響を調べるために文節毎提示によるフィンランド語の被験者ペース読解課題を課し,第三文節(SVOのOもしくはOVSのS)で情報構造と統語構造が読解時間において交互作用を示したという結果を報告している。このタイミングで交互作用が生じた理由を検討するために,フィンランド語と異なり動詞が文末に現れる日本語で文末毎提示による被験者ペース読解課題を課し,フィンランド語の結果と比較した。その結果,日本語では第二文節(SOVのOもしくはOSVのS)で両用因が読解時間において交互作用を示した。フィンランド語の第三文節と日本語の第二文節は共に情報構造の情報と統語構造の情報が初めて出そろう段階である。それゆえ,この段階で久野 (1978:39)で提案されている「談話法規則違反のペナルティー」が明らかになり交互作用が生じるのだと考えられる。