現代アイスランド語の"New" impersonal構文における対格名詞句について
大宮 康一

現在,現代アイスランド語において報告されている進行中の言語変化,"New" impersonal構文(以下,NI構文)は,新たな非人称受動態構文であり,文頭に虚辞(3人称単数中性主格)が位置し動詞に一致する。そして,対応する能動態の目的語が対格であっても格形式を変えず動詞後に位置するという特徴を示す。そこで本発表は,NI構文の動詞後の対格名詞句の出現に焦点を当てる。現代アイスランド語において,能動態から受動態になる際,対格目的語は主格となり動詞・過去分詞に一致するという過程が本来最も標準的であるにも関わらず,対格目的語は格形式を変えずNI構文に組み込まれている。本発表は,現在平行して報告されている主語の格形式に関わる言語変化,与格置換(Dative Substitution)と主格置換(Nominative Substitution)をNI構文の発生要因として捉え,想定するNI構文の発生過程を追うことにより動詞後の対格名詞句の出現について考察する。