エヴェ語のロゴフォリック代名詞―視点投射とコントロール―

西垣内 泰介,折田 奈甫

エヴェ語のロゴフォリック代名詞(LP)は,「補文引用標識」be によって導かれる従属節中でのみ容認される。本発表では,be をSpeas (2004) などの「視点投射」(POV projections)のひとつ,Speech Act Phrase(SAP)の主要部と考え、その指定部に 'Speaker'(発話主体)役割を持つproの存在を仮定する。この分析ではLPの直接の先行詞はSAP-Specのproであり,このproは主文の名詞句Xによってコントロールされる。

  1. …X … [SAP pro'speaker' beSA [IP …LP…]]
(1) における X による pro のコントロールは非義務的コントロール(NOC)の性質:(i) 非局所性;(ii) 非唯一性;(iii) c統御を要求しない,などの特性がある。従来LP「束縛」の特性と考えられていたものの多くはNOCの特性に帰せられる。さらに本発表ではproによるLPの束縛に関する理論的問題を考察する。