二重目的語構文とフェイズ単位での数量詞作用域の決定

三村 仁彦

本発表では,Chomsky(2004,2005)などで提唱されている,フェイズの概念を導入した枠組みの中で,数量詞の相対的作用域がどのように決定されるかという問題について議論する。具体的には,当該の枠組みにおける理論的帰結のひとつとして,同一フェイズ内に含まれる複数の数量詞の相対的作用域の大小は,そのフェイズ内で決定されると提案する。これにより,従来十分な説明がなされてこなかった,英語の二重目的語構文に見られる作用域凍結現象に対して,原理的な説明を与えることが可能となる。フェイズの概念を積極的に利用した研究としてはFox and Pesetsky(2005)などが挙げられるが,これらが音の面からのアプローチだとすれば,上記の提案は意味の面からのアプローチと捉えることができる。本発表の主張が妥当なものであるとすれば,フェイズ単位での派生という考え方に対して,さらなる支持を与えられるであろう。