サオ語(台湾中部)における存在・所有・所在の表現

新居田 純野 (台湾・大葉大学)

 台湾中部の日月潭周辺に住むサオ族は2001年に台湾の行政院によって公式に認知された「第10番目の原住民」である。現在サオ族の人口は三百人弱である。その中で、サオ語の話者はわずか2名である。サオ語の研究は音韻、形態に関するものが中心であり、統語に関するものは殆ど無い。本発表で用いた資料は、発表者が1年半の間、毎週末日月潭に赴き、80代の話者から得たものである。

 本発表では、サオ語の存在・所有・所在を表す三種類の表現について考察をおこなった。サオ語においては、存在を表す表現、所有を表す表現、所在を表す表現をそれぞれ異なる構文と見なすことができ、その違いは肯定文,否定文,疑問文における(a)動詞、(b)名詞句の数、(c)語順にあることがあきらかになった。