語彙候補活性化モデルにおける音韻単位の普遍性の可能性

大竹 孝司(獨協大学)

心理言語学の領域における音声言語の研究の一つに語彙認識の研究がある.これは,聞き手が脳内の心内辞書に存在する語彙の中から発話に含まれる単語を検出する際の音声処理過程を解明する研究である.これまで行われた西欧語による研究では,音素を基本単位とする語彙候補活性化モデルが提案されている.このモデルは,語彙候補の活性化の単位は音素が担うと共に普遍的なものであると主張されている.本発表では,モーラ言語である日本語の話者の語彙認識においても音素による語彙候補の活性化が起こるか否かを明らかにするために,アルファベットの文字知識を持たない児童を対象に「語彙の再構築」の実験課題を用いて実験を行ったところ,成人の話者と同様音素レベルで語彙候補の活性化が起こる可能性が明らかになった.モーラ言語である日本語でも音素に基づく語彙候補の活性化が起こり得ることからこのモデルの普遍性は高いものと考えられる.