子音対応法則からみた朝鮮語の起源: Bali-Sasak 語亜群(西マラヨポリネシア語群)および Bima-Sumba 諸語との系統的近縁性

大西 耕二(新潟大学)

朝鮮語 (KR) に関し,Tungus (TNG) や Altaic (Turkic-Mongolic) との系統的親近性が提唱されてきたが根拠不充分で,TNG や Turkic-Mongolic が Austronesian (AN) の cognate を多くもつことが最近示された (Ohnishi, 1999). KR の語彙を AN の80言語の語彙リスト (Tryon, 1995) と比較し,ほぼ全ての子音 (single and aspirate consonants) に関して,AN との間に子音対応法則が成立することを示した.KR 語彙に最酷似する cognate の 80AN 言語における存在頻度を解析した結果,Western Malayo-Polynesian の Bali-Sasak 語亜群が最高頻度 (Balinese=10.33, Sasak=11.33) を示し,Sulawesi 語群の Uma (=4.5),Central MP の Bima-Sumba 語群 (Manggarai=5.0, Ngada=4.0) が次いで高かった.子音対応関係や諸形態から,KR は Bali-Sasak 語亜群またはそれにごく近縁な AN 言語に起源することが明白に結論された.KR との酷似が AN における最酷似語彙と同程度以上の cognate を最も多くもつ非 AN 言語は Ainu 語であった.