印欧語における最上級接尾辞と序数詞の関係について

西村 周浩(京都大大学院)

イタリック諸派・ケルト語派には,複合的な最上級接尾辞として,*-is + *-mo が再建されている.この接尾辞は,伝統的な見解によると,インド・イラン語派,ギリシア諸,ゲルマン語派などに再建される *-is-to- の *-to- が *-mo- に置き換わった結果形成されたと考えられている. 本発表では,こうした置き換えのプロセスを想定することが妥当かどうかについて検討を行った.その手続きとして,*-mo- と *-to- が印欧祖語の段階でどのような状況にあったかを再考し,とりわけ,形態的・意味的類似が指摘されている序数詞との二次的な関係性に注目した.その結果,最上級接尾辞としては,-*mo- の方が *-to- よりも古いという可能性を示した.したがって,*-is- + *-mo- は,*-is- と並んで祖語に存在したアルカイックな接尾辞であると考えられる.