デンマーク語閉鎖音の再解釈:具体音声と音韻解釈

三村竜之

本発表の目的はデンマーク語における閉鎖音の再解釈にある。伝統的には閉鎖音p/b, t/d, k/g は「声」の有無で対立するのではなく、全て無声音で「気音」の有無でのみ対立するとされてきた。これに対し発表者は、具体音声のレベルでは「気音」の有無を認めつつも、音素としては「声」の有無として解釈可能であることを主張する。

論拠としては以下の3点。1)絶対語頭の位置でのb/d/g/の「声」の欠如は生理的に説明可能であるため無声無気音と解釈する必要は無い。2)絶対後末の位置では「無声有気音」と「無声無気音」が自由変異を示し、音韻交替という不自然な解釈を仮定することになるが、音素としては無声音であり、パラ言語的な要因で気音を帯びたと解釈する方がはるかに自然である。3)b/d/gが無声音であるならば、bl-, br-, dr-, gr-などの子音連結においてなぜlやrが無声化を起こさないかの説明がなされない。