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所有構文 (A's B) に関する認知的考察

平見 勇雄(東京大大学院)

英語の所有構文 (A's B) がどのような特徴を持っているのかに関しては,従来 B of A と対立的にとらえられることで,しばしば A には有生物が来ると言われてきた.確かに A's B という形の A が,人あるいは擬人化されたものであれば,A's B で表現されるといった傾向が見られるし,hierarchy の高いものが来れば,その容認度が高いということも言える.このように多くの先行研究は,A に関する特徴だけが A's B で表現されるかどうかの焦点として注目されてきた.しかし有生物でなくとも言える表現は数多くあり(the poll's result our plan's importance 等)また A に同じ名詞が来ても言える場合と言えない場合がある.(*the house's front しかし the house's owner なら OK)

したがって A の特徴だけが A's B で表現されうるのかどうかに関わっているのではないことがわかる.そこでまず A's B, B of A それぞれでしか表現できない用法を検討しどのような特徴を担っているのかを見てみると,A's B は典型的には,独立した二項間の関係(所有関係)を表わすのに対し,B of A は一項の内的関係を表わしていることがわかる.(所有関係が A's B のプロトタイプであることは Taylor (1989b) などによって多くの例が挙げられている.)そうするとその所有関係に典型的に見られる特徴から離れていくほど A's B が使われないと仮定できる.実際所有関係の A の典型は人であり,そうでなくなるにつれ A's B では表現できなくなることは既に指摘されているが,B の特徴である,概念的に独立したものであるといった性質もなくなっていくほど A's B では表現できなくなることが見られる.(B が top, beginning edge, bottom, back, middle等)

つまり,B の A に対する概念の依存度が高ければ高いほど A's B では表現できず,B of A で表現されることになるのである.

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