CONSERV を反映した論理記号による自然言語の論理解析

三田 薫(獨協大大学院)

Keenan & Stavi (1986) は自然言語の限定詞の基本的性質として conservativity という概念を提唱した.この考え方を真偽表に組み込んだ新しい論理記号(CONSERV 含意記号: ⇒)を提案する.これは A⇒B において A が F の時はサンプルから除外させる論理記号で,この記号を用いると (1),(2) の文に対して統一的な記述を行うことができるようになる.

(1) Every boy walks./ ∀x[BOY(x) ⇒ WALK(x)]

(2) A boy walks./ ∃x[BOY(x) ⇒ WALK(x)]

さらに GB の tree から直接真偽表に基づいた論理式を書くことが可能になることを示す.各文法範疇は以下の論理的役割を果たしていると考える.NP, VP は,単独で1つの論理式を持つ.AP, PP は,単独では論理式を持たないが,VP, NP の一部として論理式が真となる範囲を限定する.IP 接点は,論理的に CONSERV 含意記号 (⇒) を意味する.VP 接点は,論理的に反対方向の CONSERV 含意記号 (⇐) を意味する.(3a) の論理式は,上記の方法を用いると (3b) のようになる.

(3) a. Every boy loves a girl.

b. [EVERY BOY(x) ⇒ [LOVE(x, y)⇐A GIRL (y)]]

これを SS/PF レベルでの論理式とする.さらに LF の段階で実際に a boy が現実の何を指しているかを反映する論理式上の SS/LF 変換を,「特定」,「想定」,「存在」等の解釈に合わせて提示した.その変換公式を反映すると LF レベルでは (4) の論理式になり,このような方法で GB の tree をそのまま論理式に置き換えることが可能となる.

(4) ∀x[BOY(x) ⇒ ∃y[LOVE(x, y)⇐GIRL(y)]]