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日本語における子供の性別による言語行動の習得についての一考察

仲田 陽子(大阪大研究生)

米国を中心とした1960年代後半の女性解放運動以降,急速に発展した言語と性差研究により,女性と男性の言語行動について,様々な点で異なることが判明した.しかし,日本語における言語と性差研究は大人の言語行動について捉えたものが多く,子供の言語行動については十分に研究されていない.女性と男性とが異なる言語行動をとるようになることを明らかにするには,言語習得の初期の段階について調べる必要がある.これにより,今後の言語と性差研究について有益な示唆が得られると考えられる.

そこで,本研究は,日本語において,1) 性別によって異なる言語行動は,何歳頃からどのように習得されるのか,2) 子供同士の会話的相互作用にはどのような性差がみられるのかについて,子供の言語行動の実態をみると共に,子供の言語習得の環境についても検討し,子供の性別による言語行動の習得の実態の幾つかの側面を実証的なデータにより,明らかにすることを目的とする.参与観察法により,自然な発話を収集し,文字化したものを会話分析的手法により分析を行った.

分析結果から,子供は3歳半から4歳にかけて自己の性に応じた終助詞が習得されており,言語行動にも性差が明白にみられる,大人の子供に対する言語行動をみた場合,子供の性に応じた終助詞の提示や,父親・母親の会話のストラテジー・スタイルに違いがみられた.又,子供の言語行動と大人の言語行動には,性差の一致がみられる.例えば,女児と母親の場合では相手の意向を確認する会話のスタイルが,男児と父親の場合には直接的な会話のスタイル(命令など)が似ている.従って,子供の性に応じた大人の言語行動の提示は,子供に影響を与える性差習得の一因になると考えられる.又,3歳頃から同性同士に分れて遊ぶ機会が多くみられ,共に同性同士で言語行動を行うことも,同性の言語行動の習得の一因になると考えられる.

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