ヨルバ語の動詞連続
―並列構文の構造と意味について―

小森 淳子(国立民族学博物館)

本発表は,ヨルバ語の顕著な統語特徴である動詞連続について,どのような動詞の連続が可能なのかということを,動詞の意味に基づいて考察するものである.

ここでは,ヨルバ語の動詞を意味の面から,動作・過程・状態に大別し,

i) 動作動詞の連続には意味的な緊密性が必要である.

ii) 動作と過程の連続には,解釈が二義的になるものがある.

の2点について指摘した.

i) の意味的な緊密性は,(1) 目的語を共有する他動詞,(2) 単独で述部をなさない動詞,(3) 自動詞化した身体動作を表す動詞,などの統語的な形と相関する.

(1)Erintẹọ̀t̀ápa.象が敵を踏み殺した
踏む殺す
(2)Bàbáńfiọkọ́roilẹ̀.お父さんはくわで畑を耕している.
(進行)使うくわ耕す土地
*Bàbáńfiọkọ́ (お父さんはくわを使っている.)
(3)Molajúó.私は目を開けて彼を見た.
目を開ける見る

ii) の二義的な解釈は,過程動詞がとる対象 (theme) の解釈の違いによる.

(4)Táyégbéepojáde.{タイエはヤシ油を取り出した.
タイエはヤシ油を持って出た.
タイエ持ち上げるヤシ油出る
(5)ógbéìwénáà.{それがその紙を飛ばした.
それがその紙をもって飛んだ
それ持ち上げるその飛ぶ

それぞれ上の解釈では,対象に影響を及ぼす典型的他動詞と同じ「動作+過程」という意味の結合が考えられる.多岐にわたるヨルバ語の動詞連続を分析するためには,統語構造や動詞の他動性についての考察も不可欠である.今回試みた動詞の意味的分類にくわえて今後の課題としたい.