現代グルジア語の所有動詞の助動詞的用法

児島 康宏(東京大大学院)

現代グルジア語の所有を表す動詞 akvs, hqavs は,所有者と被所有者を表す与格名詞句と主格名詞句をとる.その2つの名詞句に加えて,更に分詞が現れることがある.その場合,意味的に2通りの解釈が可能である.与格名詞句と主格名詞句か (a) それぞれ所有者・被所有者を表すという解釈と,(b) 分詞が表わす動作の動作者・被動作者を表すという解釈である.(b) の解釈では,動詞が所有関係を表しておらず,また,動詞が現在形であるにもかかわらず過去時を表す時間副詞と共起できるという2点をもって,所有動詞のふるまいが助動詞的であると考えられる.所有動詞が助動詞的でない場合には[所有動詞+分詞][分詞+所有動詞]の両方の順序か可能であるが,助動詞的である場合には,[所有動詞+分詞]という一方の順序が選ばれる.