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照合理論と縮約現象

鎌田 浩二(上智大大学院)

本発表では,照合の概念を使った (3) から (1-2) を同種の縮約現象として統一的に扱えることを示し,音韻部門の現象を通して照合理論が経験的に支持されることを主張した.

(3) 痕跡(コピー)のうち,未照合の格素性を持ったものに限り音韻部門で見える.

to 縮約: (1) a. Mary1 seemsta be outside (= seems [TP t'1 to t1 be outside]).

b. *Who1 do you wanna do that (= want [CP [TP t'1 to t1 do that]])?

助動詞縮約: (2) Who1 do you think's coming (= think [CP [TP t'1 is t1 coming]])?

まず,縮約が出来るのは問題となる二つの要素の間に縮約規則に対し見える要素が介在していない時に限るとする「隣接条件」を仮定する.A 移動の中間痕跡は configuration に表れないと仮定すると(Chomsky (1995, pp.300-01, p. 387n75.) 参照),(1a) では隣接条件が満たされるために縮約が可能となる.(1b) の場合,wh 句と痕跡の格素性は非顕在部門で削除されるとすれば(Chomsky (1995, p.303) 参照),次のような派生をとる.つまり,wh 句は vP 内から to の指定部に強い EPP 素性のため顕在的に繰り上がる.この時点では格照合は行なわれず,未照合の格素性を持ったまま wh 句は主節 C の強い Q 素性のためそこから一挙に文頭に移動する(Chomsky (1995, p.267, p.381n11.) 参照).従って wh 痕跡は未照合の格素性を持って音韻部門に入るので,(3) より痕跡は見えることになり隣接条件は満たされず縮約は不可能となる.(2) の wh 句は,埋め込まれた T(=is) の強い EPP 素性のため vP 内からその指定部に顕在的に繰り上がる.この T は主格付与素性を持っているので,この時点で格素性の照合も行なわれる.wh 句は主節 C の強い Q 素性のためそこから一挙に文頭に移動する.従って,wh 痕跡は未照合の格素性を持たないため音韻部門で見えず隣接条件が満たされ縮約が可能となる.

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