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A Lexical Approach to "Possessor Raising" Constructions in Korean

中村 渉(電気通信大)

この発表は,コリアンの「所有者繰上げ」構文の格フレームに,「役割・指示文法」(ヴァン・ヴァーリン 1993)の枠組に基づいた意味的説明を与えることを目的とする.

John-ihaksayng-ulson-ulcap-ass-ta.
John-NOMstudent-ACChand-ACCcatch-PAST-DEC
'John held the student by the hand'.

上の格フレームの特異性は,所有者と被所有物が同じ格マーキングを受けなくてはいけないという点であるが,さらに「格の一致」(キム 1990)とも見えるこうした格フレームが不可分離所有の場合にのみ許されるという事実も説明を要する.

「役割・指示文法」は,述語の意味表示として2つの独立の層,「論理構造」層と「マクロロール」層を想定するが,「所有者繰上げ」構文の意味的な特異性は,不可分離所有の場合にのみ生じる含意関係(例:学生の手をつかまえる⇒学生をつかまえる)によって関係づけられた2つ以上の「論理構造」層を持ち,同時に平行して存在する複数の「論理構造」層が「マクロロール」層と多対一の対応を持つということに求められる.

こうした多対一の対応関係によって,上の例文中の所有者(学生)と被所有物 (手)の両者が同じ「マクロロール」(受動者)を共有するに至り,ゆえに両者が同じ格(対格)を持つことが説明できる.上の例文を,ci 'become' を用いて受身化すると,所有者と被所有物の両方が主格を取ることも同様にして説明ができる. 同様な意味表示の層の多対一対応は,2重対格をとる軽動詞構文にも見られる.

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