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海岸ツィムシアン語の複数形について

笹間 史子(京都大大学院)

海岸ツィムシアン語は,カナダ北西部およびアラスカ南東端で話される北米インディアン諸語のひとつである.系統的にはツィムシアン語族に属し,話者数はおよそ500人と推定されている.

海岸ツィムシアン語には,重複,接辞の付与,補充法など,いくつかの複数形形成法がある.本発表では,これらの方法によって形成された複数形が文中でどのように現れているかを,現地調査で得られた資料をもとに観察した.

その結果,次のことが明らかになった.1) コンテクストによらずにそれぞれの文中で複数性が表示される.2) ある名詞項の複数性を文中の2語以上において表しうる場合,複数の語に表示されることが多い.3) 一般的,生産的な方法で複数形をつくる語ほど単数形で現れることが多い.逆に,少数の語によってしか用いられない非生産的な方法を用いる語は必ず複数形をとる.

さらに,同語族の他言語,そして広く北米の語言語と比べると,海岸ツィムシアン語の動詞における複数表示が少ないことは,この言語で重複が複数表示以外の機能をもつことと関係している可能性があると指摘した.すなわち,動詞は重複により反復や継続性を表しうるので,そこで示されているのが反復や継続性ではなく,自動詞主語名詞・他動詞目的語名詞の複数性であることをはっきりさせるために,自動詞主語名詞・他動詞目的語名詞における複数表示が多くなったのではないかと思われる.

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