「僕は目が覚めた」対「僕は目を覚ました」

大野 喜代治(Massey University)

日本語には,「僕は目が覚めた」「僕は目を覚ました」など一群の表現のペアがある.

本研究の発表要旨は次の通りである.先ず第一に,上記のようなペアをなす表現の自動性若しくは他動性を確認すると共に,その両者にも所属しない不確定な特性をファジネスという概念で説明した.第二に,自動詞表現及び他動詞表現の両者と意志形との共起性を観察の上,他動詞表現は,意図性と言うプロトタイプな特性を少なくとも潜在的には保有していることを明らかにした.第三に,プロトタイプな他動詞構文は二つの項から成り,意図性という意味を持っているのみならず,その二つの項が二つの独立した存在物で埋められねばならないことを提案した.第四に,三上 章の受動態との共起による動詞の分類を適用し,他動詞表現がノンプロトタイプな他動詞構文であることを確認した.