韻書の構成法から見た西夏語の等韻について

荒川 慎太郎(京都大大学院)

西夏語の韻母は,当時の西夏語音韻学では105種類と細分化されていたが,更なる分類は韻書には明記されなかった.本発表では,西夏語韻書『文海』の構成法をもとに,これらの韻母の下位分類を試み,西夏語音韻学に等韻による韻母の弁別・配列が存在することを示唆した.

発表者が作成した「西夏語通韻字典」をもとに,声母と韻母の結合法を整理した.西夏語音節の結合状況を調査すると,西夏語の声母と韻母では極めて規則的に結びつき,しかも循環的に配列されている.そのため,先行研究での音結合の一般化を,二つの結合様式 A・B のように修正することで,西夏語の105韻類をかなりの部分網羅できることが判明した.先行研究での等韻のやや不自然な設定に対しても,この結合様式を応用して妥当な案を示した.西夏語韻母の下位分類を試みた結論として,西夏語の105韻類は19種のグループに分類できるという一試案を提示した.