バスク語アスペイティア方言の助動詞 da/die,debe/ditube による「非人称」

吉田 浩美(東京大大学院)

<ABS.NP + da/die> →動詞の不完了分詞を伴って一般的・習慣的な事態を述べることができるが,完了分詞を伴って完了した事態を述べるには制限がある.ABP.NP で表されるものが人でも事物でも有り得る場合は,事物の場合に限られる.人だけの場合は,それが specific, definite である場合は言えない.いわゆる他動性の強い動詞,強く不快な感情の作用を表わす動詞を伴う場合は,ABS.NP で表されるものが何であれ,言えないのが普通である.

<ABS.NP + debe/ditube> →動詞の不完了分詞を伴って一般的・習慣的な事態を述べることもでき,完了分詞を伴って完了した事態を述べることもできる.

<ABS.NP + da/die>, <ABS.NP + debe/ditube> ともに言える場合は,状況がより特定的・限定的な場合,あるいは行為者に特に責任を求める気持ちや,行為者が対象に被害を与えたという含みを表わしたいときには後者が好まれる傾向がある.