現代標準アラビア語の条件文における kâna +“未完了形”

近藤 智子

現代標準アラビア語の条件文は,次のような場合 kâna +“未完了形”が用いられる.(1) 前件及び後件節:属性,地理的事実,身体特徴,心理状態,可能性,動作の継続や反復を表す場合 (Nebes 1982).(2) 接続詞 'iðâ に導かれる条件文前件節:仮定的事象や現実化以前の事象ではなく,話者による事実の主張を表す場合.但し,“未完了形”が状態や進行相を表さなけい達成動詞の場合を除く.(3) 反事実を表す接続詞 law の条件文後件節:後件が,話者の主観的態度を表す疑問文や感嘆文の場合.このとき,前件は反事実の modal,後件は話者の主観的態度の modal を表すので modal split が生ずる.kâna +“未完了形”の kâna の部分は,law で導入された反事実世界の modal を,それが一旦断ち切られた後件節に再導入する機能をもつ.“未完了形”の部分は,話者の初話現在の時制と(未完了相の場合もあるが)主に完了相,可能性の法性を表す.