チベット語可能表現の統語論的分析

岩田 清孝(神戸市外国語大大学院)

チベット語の動詞述語構造は『動詞(-接辞)+助動詞』と形式化できる.本発表ではその構造に可能補助動詞が付加された場合の統語論的分析を (1) 共起できる動詞,(2) 助動詞の選択,(3) 格標示という三つの観点から試みた.

(1) 可能補助動詞と共起できる動詞には制限があり,その制限は可能補助動詞ごとに異たっている.(2) 主語が一人称,動詞が動作動詞の述語構造に可能補助動詞が付加されると,助動詞が変化する.その変化は時制,相によって異なっている.(3) 可能補助動詞が付加されると主語の格が変化することも有り得る.

以上をまとめると,可能補助動詞付加は動詞述語構造の統語構造だけではなく,動詞述語構造を越えて,主語の格にまで変化を及ぼす可能性があることが判明した.