リトアニア語の「副詞的」分詞における従属的な時間の表現

櫻井 映子(名古屋大)

リトアニア語のいわゆる「副詞的」分詞は,文の副次的な述語を示すことを基本的機能とする.本発表ではこのタイプの分詞の時間表現に関して次の点を明らかにした.(1) 分詞のアスペクトは,基動詞のアスペクト的意味〈限界性/非限界性〉,分詞の局面限定的な機能(過去分詞のパーフェクト的な〈限界づけ〉/現在分詞のインパーフェクト的な〈限界間づけ〉),文の主要な述語句を構成する本動詞のアスペクトとの関わり合いの中で成立している.(2) 分詞のアスペクトは,本動詞の独立的時間に従属する相対的時間(従属的タクシス)に結びついており,常にimperfective 同時性を含意する.それにより,分詞は本動詞とともに時間的統一性をもつ切れ目のない複合的場面を表す.(3) 本動詞と主語不一致の分詞/perfective 順次性を表す分詞は,主語一致の分詞/imperfective 同時性を専ら表す分詞よりも時間的な独立性が強い.