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反対語意識のしくみ

荻野 綱男
野口 美和子

本研究では3種類の調査結果に基づいて反対語の性格を明らかにした。
第一に,『ジュニア反対語辞典』(東京堂出版)に載っている全てのペアを,その概念関係から分類・整理してみた。その結果,反対語といわれるものは,従来考えられていたものよりはるかに複雑なものであることがわかった。
第二に,『三省堂国語辞典』の反対語の記述を調べ,ある語Xの反対語がYと書いてあって,Yのところには反対語がXだと書いてない例を網羅的に抽出した。その結果,反対語には方向性かおる(Xの反対語がYであっても,Yの反対語がXだとはいえない)ことがわかった。
第三に,東京の大学生266人にアンケート調査を行った。質問内容は多くのぺアを提示しそれぞれが反対語かどうかを問うものと,単語を提示しその反対語は何かを問うものとがあった。その分析の結果,次のようなことがわかった。(1) 反対語には方向性がある。(2) 反対語意識には男女差があり,女のほうが反対語の判定が正確である。(3) 概念関係が同じで品詞が異なるものを比べると,反対語らしさがちがってくる。(4) 二つの構成要素だけで一つの意味分野が形成されている場合には反対語として認識されるが,三つあるいはそれ以上の要素があると,その中に複雑な意味関係が意識される。(5) 意味が同じ場合,同じ文体レベルにあるペアほど反対語らしい,(6) 反対語意識にはそのペアをつなげた単語(eg. 上下,勝負)が存在するかどうかが影響している。
反対語は対義語(意味が対をなしている語)と考えるべきであり,単語の意味関係というよりは現実の世界での「もの」の関係を表わしている。したがって,何か反対語か(何か対をなしているか)という問題はその言語の話者が世界をどう認識しているかにかかわっている。

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