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英日方向の機械翻訳におけるハ/ガ選択の条件

風斗 博之

英日方向の機械翻訳システムにおいて,『ハ』(主題,対照)と『ガ』(中立叙述,総記)の適切な選択を行う方法について発表した。素性等を用いて文内の統語的情報のみを用いて記述できる「統語的条件」と,前後の文脈や言語外の知識を用いて記述されるいわゆる「談話的条件」とにわけて全体の処理を示した。

  1. 統語的条件
    ハ/ガの選択を決定する統語的な要因として次の3つを考えることができる。
    (1) 主格名詞句の種類,特に,定/不定に関する区別
    (2) 述語(動詞句)の種類,特に,一時的動作・存在・状態/習慣的あるいは恒常的動作・存在・状態の区別
    (3) 主節/従属節の区別,従属節の場合,接続詞の種類
    これらの条件を3本の軸に取り,吝用法のハとガの現れる範囲を定めることができる。ここで重要なのは,定/不定・一時的/恒常的等の素性を形式的にうまく扱うことのできる枠組みをシステムが採っていることである。この翻訳システムでは,素性の集合を基本範疇として,記述力を強化した範疇文法(さらにそれを依存木で表した)を用いている。これによって,ハ/ガの選択は,主格マーカーを中心に,下の範疇(名詞句),上の範疇(動詞句),さらにその上の範疇(接続詞等)を参照することによって行われる。
  2. 談話的条件
    各用法のハとガに対して,先行する文・言語外知識・推論を用いた談話的条件が与えられる。例を挙げる。総記のガに対しては次のような条件が与えられる。
    [F (X), G (A)], specifies (A, X)
    たとえば,[誰がキムチを食べるか。太郎キムチを食べる。]のような談話(文の連鎖)はこの条件を満足させる典型的なパターンである。ここで‘太郎’は「キムチを食べる人」を特定化している。対照のハに対しては,次のような談話的条件が与えられる。
    [F (A), G (B)], contrastive (F, G), ~ (G (B) → F (A))
    ‘G (B) が F (A) を含意しない,という最後の条件は,言語外の知識とともに,次のようなハ/ガ選択の差を説明するものである。
    (1) [太郎は花子を愛していない。二郎ハ/ガ花子を愛している。]
    (3) [太郎は花子と結婚しなかった。二郎*ハ/ガ花子と結婚した。]

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