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複合語としての中国語の姓名

山崎 直樹

中国語の姓/名には,“小”という接頭辞のつくもの(一音節姓/名,“子”という接尾辞を含む二音節名,重複形になった名)と,つかないもの(二音節姓/名,姓+名)がある。これを説明するために,Allen 1978 の「拡大順序付け規則」を援用する。 中国語の語形成のレベルを次のように設定する。L I: 接辞付加+(小-,老-,-子など),L II: 拘束形式の語根の複合#(姓名の場合,接辞以外の一音節要素; 中国語では一音節姓/名は拘束形 (d. Chao 1968)),L III: 自由形式の語根の複合 ## (姓名の場合,二音節の要素)である。そして姓名を生成する場合には,次の規則を設定する;「L I は L II・III の前」そうすると,可能な形式と不可能な形式が区別できる。小+胡(姓),小+梅(一音節名),小+[英+子](接尾辞をもつ名),小+[梅+梅](重複形名:重複化は Marantz 1982 に従い,接辞化と考える),*小+ [A # B] (一音節姓と一音節名の結合,二音節姓/名,ex:*小 + [欧 # 陽)。
非常に親しい間柄では,二音節名の後半のみをとりだして用いることもある(とりだされるのは常に後半)。これは姓名の配列において,英語の First Name1 Middle N2 Last N3, という配列の[公的性格: 1< 2 < 3]という構造と全く鏡像をなして,[姓1[名(前半)2 名(後半)3]]という配列が[公: 1 > 2 > 3]という構造をもつことに由来するためである。そのため漢民族の命名法における輩行字(一族の同一世代間で名前に共通して使われる宇)は,二音節名の場合ほとんど前半におかれる。輩行宇はその公的性格が,姓と,名の個人専用の部分(普通,後半部分)との中間にあるからである(ex: 高’ 慧,高’ 新 {下線部=輩行字})。英語風表記で趙123 → Yuen2 Ren3 Chao1 のように,完全な対象形でないのは,分析が[趙 # [元 # 任]]の深いほうの節点にまで及ばないため。

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