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日本語の数表示の特徴とその普遍性

安武 知子

本発表では,日本語における数表示手段のうち,いわゆる複数接辞の機能と分布上の特徴について考察し,その普遍性について論じた。
日本語の複数接辞は,次のような点で,印欧語のものと異なっている。(1) 適用される名詞の範疇は可算性 (countability) に基づいて決定されるのでばなく,有生性 (animacy) に基づいている(*茶碗ら,*考えども)。(2) 非指示的環境では用いられない(*わたしたちのクラスは女子たちが多い/*あの方たちは中国人たちです)(3) 固有名詞にも用いられる(野村さんたちはもうじきやってきます)(4) 必ずしも名詞によって表されるものの集合を意味しない。例:「先生たちは出かけました」という場合,出かけた人がみんな先生であるとは限らない。(5) 結合名詞全体に付く(わたしは近所の奥さんやお嬢さんたちにお花を教えています)。
これらの事実から,日本語における複数接辞の特徴として,それが (1) 群(グループ)表示機能をもち,一種の集合名詞を形成するということ,および,(2) 無生物と非指示的名詞句には複数接辞が付かないが,その理由は両者がともに,陳述の背景要素となり,数が問題とならないためであるということが明らかとなった。
日本語の数表示は Motavcsik (1978) の指摘している数表示の普遍的傾向に合致しており,トルコ語の複数接辞にも似たような特徴が認められる。このような事実の存在は自然言語における数表示の特性が単数か複数かというような単純な区別よりももっと多様なものであることを示している。

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