極性一致の付加疑問文
―談話の流れの中で―

稲木 昭子

先行する平叙文と後続する付加疑問との肯定一否定の極性が一致する Cp (constant polarity) 付加疑問文は,Rp (reversed polarity) に比べてその使用頻度が少なく,従来 Rp の付属的な形式として取扱われてきた。しかし,その先行発言,及び後続の応答文との関連において考察する時,より一層 Cp 付加疑問文の特徴が明らかになる。
Cp 付加疑問文の RC (reference clause ― 付加部が対応する先行文)には,そこに引用されている文が,先行発話の中に A. 明示されている場合と,B. 暗示的な場合と二通り考えられる。
A 型の RC には,先行発言のなかに明示されている文の一部あるいは全文が引用され,それに Cp Tag を付加して,その発話への話し手の反応を示し,相手に内容確認する。
B型では話し手が相手の発言,態度を受けとめ解釈して,相手の次の言葉を RC と推測し,「RC というのですか。(どうですかね。)」と相手の言葉の先取り発言をする。
もう一つの暗示的な場合は,話し手と聞き手双方の関与する場面で暗黙のうちに了解される事象を RC に引用し,「この状況を表わす言葉は,RC ということになりますかね。」と,聞き手を抱き込んで言葉を決定しようとする。
以上 A,B 両型とも RC は「言葉について言葉にする」表現になっていることがわかる。つまりメタ言語表現ということである。
Cp 付加疑問文は,先ず基本的には相手の言葉への単なる反応,内容確認として使用される。しかし話者が相手,その場の状況等を解釈し推測してその結果を問うこともあり,この時は,単なる RC 是認を越えて皮肉,不信,威嚇等の一種の強い感情表現としての機能をもつ。つまり Cp 付加疑問文は 'not RC' を相手に認めてほしいという期待をもって使用される。従ってその応答には単なる yes, no 以外の会話の駆引きがみられる。