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「XはYがZ」文の幾つかの変種
―‘再主題化’と分析されるものなど―

菊地 康人

「XはYがZ]文には基本的なものだけでも,次の諸タイプかおる。

  1. このパンはポチがかじった。(←ポチがこのパンを…。格成分の主題化)
  2. あの人は本が好きだ。(Yが目的語にあたるもの)
  3. 象は鼻が長い。   (←象の鼻が長い。「XのYがZ」の主題化)
  4. カキ料理は広島が本場だ。(←広島がカキ料理の本場だ。 「YがXのZ」の主題化)
  5. 彼は書く本がよく売れる。(←[彼が書く]本が…。従属節中の語句の主題化)
他に種々の変種があるが,本発表では次の変種を指摘する(ほぼ対比文脈専用)。
(1) C型のX,Yを入れ替えたもの(CYX型)C型の基底形「XのYがZ」のY (Head) のほうが主題化されたもの(CH型): 趣味は姉がテニスで,妹がピアノだ。(基底形: 姉の趣味がテニスだ。C型なら: 姉は趣味がテニスだ。)
(2) D型のX,Yを入れ替えたもの(DYX型): 今日は三越のバーゲンが最終日で,高島屋のバーゲンが初日だ。(D型なら: 三越のバーゲンは今日が最終日だ。)
(3) D型の基底形「YがXのZ」のZのほうが主題化されたもの(DH型): 趣味はテニスが姉で,ピアノが妹だ。(基底形: テニスが姉の趣味だ。)
(4) E型のX,Yを入れ替えたもの(EYX型): 書いた本は,A教授がよく売れていて,B教授はさっぱり売れていない。(E型なら: A教授は,書いた本が…)
(5) C型のXが「PのQ」という形をしていて,そのQが‘再主題化’され「QはPがYがZ」となったもの(CRT型。RT= Retopicalization): 秘書は,月木金が脚が綺麗で,火木土が声が綺麗だ。(C型: 月水金の秘書は脚が綺麗だ。)
(6) RT:料理は,カキが広島が本場,フグが下関が本場だ。(D型: カキの料理は…)
(7) RT: パンは,こっちがポチがかじって,そっちはミケがなめた。(A型: こっちのパンはポチがかじった。)
基本的な「XはYがZ」文を基にして,‘X,Yの入れ替え’や‘再主題化’で派生的な「XはYがZ」文を拡張して作る仕組みが働いている(ただし,これはいわば破格的な操作で,できた文は対比文脈専用の周辺的な文となる)と分析される。

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