日本語の度量句を伴う場所項

野村 純也

「窓の上50cm のところ」のような日本語の場所項は,後置詞と度量句の語順や「ところ」の有無などによって,異なる3種類の解釈を持つ。本発表では,生成文法理論に基づいて,この現象が2つの前提を立てることで説明できることを示す。1つ目の前提は,度量句が生じ得る位置が2つあるというものである。1つは,後置詞句の上の#Pの指定部で,このとき,度量句はベクトルの長さを測る。もう1つは,名詞句の上の#Pの指定部で,この場合は,名詞が指示するものの長さ,重さなどを決定する。2つ目の前提は,2種類の音形を持たない名詞が存在するということである。その2つとは,PLACEとPARTである。この名詞は,音形を持つこともあり,日本語では「ところ」と「部分」である。場所項の3種類の解釈は,度量句がどちらの位置にあるかと,主要部の名詞がPLACEかPARTか,もしくは音形のある「ところ」か,によって説明される。